はじめに
読書法は、学びを広げたくさんの領域に興味を持つために必要な技術です。
それだけにこだわってしまうと、中身を読まなくなりますので、バランスを取ることが大切ではありますが、より知識を豊かに、知見を広めるためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
書店に出向いたはいいけれども、どんな本がいいのか目移りしてしまって困る。
そういう方のために、今回は一冊の本から枝葉を生やす「引用元読書法」を考えてみたいと思います。
きっかけになった一冊の本
この記事を書こうと思ったきっかけとなった本があります。
この本は、全世界の名著と呼ばれるものたちから、一部分を抜粋して365日分、一日一日日めくりカレンダーのように文章を味わうということを目的に上梓された書籍といえます。
実際に読んでみると分かりますが、一文でもずっしりと重い文章であったり、軽妙でありながら感動させるような文章もあったり、一日一日違った印象を持たせてくれる文章ばかりです。
私は、この本を1日で読んでしまいましたが(味気ないかは別として)、こういう書籍はただ「味わう」で終わらせてしまってはもったいないと思うのです。
なぜならば、作者はこの本を作るのに最低でも365冊の本を読まなければならなかったという背景があるから。
しかも、そのなかから心を動かされたものを選び抜くには、読書をする目が備わっていないといけません。
我々はその結晶、上澄みを味わっているわけですが、さらに深めて読書するために、上澄みの奥深くにある「実体」を味わってみるということをお勧めします。
例えば、あるページを開いてナイチンゲールの著した『看護覚え書』というものがあります。そのなかに「ロンドンの子供たち」がありますが、
子供たちに、新鮮な空気が入り、明るく、陽当たりよく、広々とした教室と、涼しい寝室とを与え、また戸外でたっぷりと運動をさせよう。たとえ寒くて風の強い日でも、暖かく着込ませて充分に運動させ、あくまで自由に、子供自身の考えに任せて、指図はせずに、たっぷりと楽しませ遊ばせよう。もっと子供に解放と自然を与え、授業や詰めこみ勉強や、強制や訓練は、もっと減らそう。もっと食べ物に気をつかい、薬に気をつかうのはほどほどにしよう。
「ロンドンの子供たち」
こういう風に引用されています。ここで看護師として有名なナイチンゲールの考え方の一部分に触れ、子育ての参考にできることも非常に重要ですが、心を動かされたら、「ロンドンの子供たち」を実際に読んでみるのです。
普段我々はナイチンゲールの著した本など読みません。書店でも見えやすい場所に置いてあるとは限らない。ですが、見えにくい場所に置いてあるから質が低いというわけでは決してありません。
心を動かされた一文を書く作者は、きっとその一冊ではさらに深い感動を与えてくれるはずです。
このようにして、「さわり」の部分を味ってみたら、今度は一冊を読んでみる。
これが、「引用元読書法」の一つの醍醐味です。
本文から、参考文献に注目する習慣をつける
興味のある分野には、必ず入門書が存在します。
その入門書は、必ずその分野の有名な書籍や知見を集め、分かりやすいように書いてあるはずです。
そこには、作者が参考にした文献(もとになる情報)が存在しているわけです。
入門書である程度の感覚を掴んだら、次はその世界で有名なそういう文献を読むことをお勧めします。
入門書はあくまでも「ガイドマップ」のようなもので、実際にその分野という「遊園地」で一つ一つの文献という「アトラクション」を楽しまないのはもったいない。
「~~の名著10選」や「~~を読み解く」などの書籍があれば、それらのなかで挙げられている書籍を片っ端から読んでしまう。
そうすると、より広く、深く、読書を楽しむことができるでしょう。
おわりに
引用に注目するということは、その領域のコンセプトを深く知るということに繋がります。
普段、なかなか触れないけれども有名で、いつか読んでみたかったと思っている作者たちは、こういうところで改めて日の目を見ることになります。
先人たちの残した多くの教えを、このような書籍を発見のきっかけにして、広い読書をしてみてはいかがでしょうか。