はじめに
私たちは、日々、決められた時間の進みで人生が流れています。
1日は24時間、そして1年は365日。そうすると1年歳をとる。
この1年という単位で我々は仕事もライフイベントも動いています。
毎日一生懸命勉強している人にとっては早く成果が欲しいと思うこともありますね。
様々な知識を付けて、見分を広めることはできても、時間を先取りすることはできませんから、やはり経験というのはすぐに積むことができるものではないのでしょう。
医師の世界も、非常に長い間勉強しているにもかかわらず、時間の進み方、経験の積み重なりはゆっくりとしているものです。
タイトルの「歳をとらないと分からない」というのは、そうなっていない人たちにとっては複雑な気持ちになる言葉ですね。
どうしてかというと、我々は時間を倍速にすることができませんし、一足飛びに進むこともできませんから、どうしても前を進んでいる人を追い抜かすことができないというのが一番の理由になるでしょう。
しかし、あながちその言葉は間違っていません。
経験は、時間の積み重ねによって熟成される
経験というのは、その定義からも明らかですが、できごとを体験して得られることそのものです。
つまり、イベントを多く体験するためには、発生頻度を増やすか時間を伸ばすか、それしかないのです。
ですから、経験は時間を伸ばして体験するイベントの数にもちろん影響されます。
単純計算するなら、20歳と40歳では体験するイベントは倍異なるわけです。
ここで、単純計算できないもう一つの要素が入ってきます。
それが、ある時間当たりの経験するイベントの頻度です。
短い時間に多くのイベントを体験することができれば、20歳でも40歳に相当するような経験がある人もいるでしょう。
ただ年齢を重ねたからといって経験が純粋に増えていくかというとそうでもありません。
そこには、常にアンテナを張って多くのイベントを体験しようというモチベーションがなければ無為に歳をとってしまいます。
若い方で有名になったり、国内外で活躍するような人たちは少なからずそういうイベントの体験頻度が高いです。
経験が、時間を経るごとに多くなって深くなることは間違いではありません。
ですが、それだけでもないというのが現実です。
自身の時間を振り返ると経験が積み重なっていることがわかる
「若い奴には分からない」という言葉がなぜ心に棘を残すのか。
それは、純粋に経験が時間の経過で蓄積されているという側面だけを見ているからです。
そのことについては、先ほどの方法でイベントを体験する頻度を増やすことで同じ速度で走るレースから一歩先を行くことができます。
ですが、ここで一つ考えたいのが、自分自身の現在と過去の話です。
おそらく、今の自分は1年前の自分よりも確実に経験を積んで色々なことが分かるようになってきているでしょう。
もし、1年前に一生懸命に勉強したり仕事して「ここがゴールだな」と考えることがあったとしても、現在はまったく違うことに興味が移っていたり、さらなるスキルアップをされている方もいらっしゃるでしょう。
自分のこととして考えてみると分かりますが、自分も確実に経験が時間の経過とともに多く深くなっていっているのですね。
例えば30歳のときの自分が溌剌と将来の夢を語り、万能感に浸っていたことがあったとしましょう。
それでも、40歳になれば、10年分の経験がその情熱とともに積み重なっていきますから、30歳のころに抱いていた感覚とはまったく異なる境地に至っているはずです。
30歳のころの自分に「もうちょっと落ち着けよ」という風に言いたくなるくらいかもしれませんね。
私は少なくとも過去のどのタイミングの自分よりも、現在の自分がより前に進んでいることを感じますから、「歳をとらないと分からない」という表現はあながち間違いではないなと思うようになりました。
今できることは何か
そう考えると、やるべきことは明白になります。
まとめてみると、
経験は頻度×時間で積み重なっていく
となりますから、時間が我々にとって動かせないものであるとするなら、いじるべきは「頻度」です。
現在の時間を最大効率で回すこと。これが経験を最大にする秘訣でしょう。
経験が思うように積めない、先に進んでいる自覚がない……そういうことを考える瞬間というのは必ず、動かさざる「時間」に焦点が向いてしまっています。
我々ができることは、今できることを最大限にやって、時間の積み重ねを待つことです。
基本原理は、投資の世界でも同様でしょう。今できる最大限の運用をしながら、時間が経つのを待つわけです。時間だけが味方でもなければ、元本だけが味方でもない。それでも現在の投資方針をもっとも納得のいくかたちでやることが重要なのではないでしょうか。
おわりに
夢を持っていらっしゃる方々は、なかなか実現のビジョンが見えずもどかしい思いをすることがあるかもしれません。
ですが、正しい方向で、正しい量で行動することができているなら、時間は経つのを待つしかないということになります。
「果報は寝て待て」という言葉がありますが、これは毎日の行動がきちんとしている人に対することわざだと感じます。
反対に、今まで自分が過ごしてきた時間は、経験を最大化するのに十分だったかを反省してみることも必要でしょう。
もしも、結論を先取りしたくなる感情に駆られたら、落ち着いて「頻度」と「時間」のうち「頻度」に着目しながら今できることをやっていきましょう。