なぜ定時帰宅をお勧めするのか
勤勉な日本人は、夜遅くまではたらくことが多いですね。残業も多く、最近では残業ゼロ運動のようなものも各地で起こるようになってきたようです。
どの会社でも、基本的には労働時間というのが定められています。しかし、それは既に形骸化し、いつの間にか残業時間がどんどんと多くなってきたという方もいらっしゃると思います。
なぜ私が定時帰宅をお勧めするのか。それは、大きく分けて2つの理由があります。
定時に帰宅することを心がけることで、気持ちの切り替えが簡単になる
24時間の中で、皆さんは恐らく圧倒的に仕事に割く時間が多いはずです。朝早くから家を出て、夜遅くに家に帰ってくる。家は、ほとんどお風呂に入って寝るだけの環境でしかない、そういう方も多いのではないでしょうか。
これでは、不安な気持ちがいつまでたっても収まらないというのも不思議ではありません。朝仕事に行けば、もうその一日は仕事で終わってしまうのです。
ですが、定時に帰宅することを心がけることにより、「今日は〇〇時で帰る」という境界線がはっきりしますから、メリハリのある生活ができるようになります。
仕事を終えたあとの自分の時間を確実に作り出す
定時で切り上げれば、就寝までの時間は食事や入浴に充てる時間を差し引いても、十分自分の時間を取ることができます。しかも、定時でしっかりと切り上げることにより体力もそれなりに残っているでしょうから、自分の趣味やこれからのことを準備する余力もあるでしょう。
早く帰ることで、自分の時間を創り出し、それをさらに仕事の生産性向上に繋げていくのです。
普段、皆さんは自覚がないかもしれませんが、朝起きたときから頭の中で仕事のことを考え始めた瞬間、それはもう「仕事モード」に入っていることと同じです。そして、帰って家に入ってからも仕事のことを考えているようだと、それもまだ仕事モードが残っているということです。恐ろしいことに、生活の時間と思っていた時間も、頭の中に仕事という言葉がこびりついている限り、それは完全に「生活」ということはできないのです。一日のほとんどを仕事に支配されて、生活が思うままにできなくなっているのが、現代の多くの社会人の悩みなのかもしれません。しかし、定時で帰る習慣をつけることで、一日の生活にリズムをつけ100%仕事と100%生活の頭を使い分ける。これが、最も私の言いたいことです。
定時帰宅をするための準備
では、具体的に定時帰宅を達成するために皆さんができることを考えていきましょう。
仕事をその時間内に終わらせる
当たり前のことと思われるかもしれませんが、定時に必ず上がろうと決心して取り組む仕事は、自身の時間もかかっていますから、より集中して取り組むようになると思いませんか。残業時間があるから、あとでもいいやと思ってしまうと、その時点での労働生産性はあまり高くなく、ずるずると時間を消費しながら仕事を終わらせていくというスタイルになりがちです。
時間内に終わらせようと考えると、普段よりも仕事の段取りを意識してゴールに向かう必要があります。先回りして考え、あとに仕事が残らないようにできることはすべてやってしまう。そうすることにより定時で上がれるばかりか、翌日の仕事量すら減る場合があります。
こうして、どんどん先回りをして仕事をすることで、時間の節約にもなりますし、生産性も向上して結果的に
長い仕事時間×低い生産性 → 短い仕事時間×高い生産性
と、ある意味で一石二鳥の結果が手に入ることになります。
他人の目を気にしない
自分の仕事を手早く終わらせるとしても、その努力のさなかに「周囲の目線」というのが気になる方も多くいらっしゃると思います。日本人は周りを見ながら行動を決定するところが多分にありますから、周囲の同調圧力に負けて、結局夜遅くまで仕事をして、付き合いで飲みにも行き……というように、他人のスケジュールに引っ張られて自分の生活が作り上げられていることもあるでしょう。
それは、きっぱり止めましょう。自分の労働時間は自分で決めることです。
自分が納得いく仕事ができたら、それで自分の労働は終わりです。もしかしたら他の人は夜遅くまで残ってやることの方が効率が良いのかもしれませんし、効率が悪くて結果的に夜遅くまで残らざるを得ないのかもしれません。ですがそれは、あなた自身が考えるべきことではないのです。
仕事はあなたのためにあります。仕事に引っ張られても、他人に引っ張られてもいけません。
逆に、他人の目を気にしないことは、自分ですべての労働に責任を持つということでもあります。そうなると、自分の仕事の質は最大限良くしようと努力することもできますよね。ただ早く帰るだけではなく、それなりの結果を残すべく努力して、その結果として帰れるということを念頭に置きながら、自分の仕事をしましょう。
朝早く来るという習慣をつける
私はどちらかというと朝早く起きてその時間帯にできる仕事を終わらせてしまうタイプです。もちろん、遅くの出社の方が効率が良くなる方もいらっしゃるかもしれませんが、定時に上がる方法で一番良いのは「早寝早起き」と同様、早くに出社し早くに退社することです。
起床してから数時間は、頭がエンジンをかけ始めて最もスムースに頭の中が活性化され、活動できる時間帯になります。それはホルモンの動きからしてみても、睡眠覚醒リズムの話からしてみても合理的なものです。午後になると昼食をはさんで一時的に眠くなる瞬間がやってきます。
この睡眠リズムに関しては以下の記事で説明しています。
午前中に一気に仕事を仕上げ、あとは定時に向かって明日への準備も含めてゆっくりと行う。仕事の中でもこういう風にして自分なりにリズムを作ると、ただ朝から夕方まで漫然と仕事をするよりかは自分の中でスケジュールも明確になり、より生産性が高まるはずです。
理想は生活と仕事の融合
さて、ここまでは定時に帰るということを一つの区切りとして、仕事と生活を区切ってきました。この考え方は、いわゆる「ワークライフバランス」という考え方に近いですね。バランスという言葉を使って、仕事と生活の比重を考えていくやり方です。この論調だと、仕事の時間を減らして、もっと自分の時間を持てるようにしましょう、という含みが持たされている感じがしますね。
もちろん、現代を忙しく働いている我々日本人にとっては、ワークライフバランスを考えることも重要なのかもしれません。諸外国はとっくに自身の生活や家族と過ごす時間を優先しているという風潮があるくらいですから、日本も定時に上がるということを習慣づけて生活を重要視しても良いとは思います。
しかし、それだけだとどうしても仕事の時間は「生活の時間ではない」と区別され、それはもしかしたらネガティブなイメージに直結してしまうかもしれません。
せっかく仕事をしているのですから、仕事も自分の人生の一部分として楽しくできるようになれればいいと思いませんか。一番良い方法は、生活と仕事が融合して、24時間自分が楽しく過ごすことができる状態です。朝起きて、「ああ、仕事か」と考えるのではなく、まるで朝ごはんを食べるかのように仕事をする。夜になっても「ようやく仕事が終わった……」ではなく、お風呂に入ってリラックスしながら楽しいことを考えているような感覚で仕事を捉える。
そのためには仕事に対する考え方や選び方をきちんとしなければなりません。そう簡単に仕事は自分に歩み寄ってきてはくれません。もともと仕事があり、それに自分が乗っかる形で動いているからですね。
もしもこの理想形を実現しようとするのならば、自分で仕事を創り出していくくらいの気持ちを持つ必要がありますね。自分が本当にやりたいことを仕事にしていく。あるいは、その仕事を自分がしたいことに変えてしまう。
しかし、そうはいっても簡単にできることではありません。何事も、小さいことから行動を始めて、大きな結果に繋げていくことです。
まずは定時に上がる習慣を身につけましょう。そのうえで、自分の時間をしっかり確保して、仕事に対する向き合い方をゆっくりと考えていけばよいのです。
一日を仕事だけで慌ただしく終えてしまうよりも、はるかに効率の良い仕事と、自分の理想の仕事を追い求めることができますよ。