謙虚さは強い芯から滲み出てくる
仕事をしているとき、学校にいるとき、皆さんは色々な人と触れ合う瞬間があると思います。いつもと同じ人と話しているときも、新しい人と出会い挨拶するときも、皆さんは必ず第一印象というものを持ちます。「あのひとはこういう人だな」ということを、本能的に感じ取る。
そんななかで「あの人は謙虚だな」という人もたまに見かけますね。常に、誰に対しても姿勢が同じで、上の人だろうが下の人だろうが、決して怒鳴ったりもせず、馬鹿にしたりもせず。自分の能力を褒められたとしても「いえいえ、とんでもないです」ということもある。
皆さんの目には、そういう謙虚な人はどういう風に映るでしょうか。「もっと自分の能力を認めればいいのに」とか「あんまりペコペコしていると逆に失礼に感じるな」など、感じ方は色々あることと思います。
しかし、私は「謙虚な人には必ず芯がある」と考えます。芯がある、というのは、自分なりの軸・考え方がしっかりしているということです。しかも、慇懃(丁寧すぎる)さを見せない、自然体の謙虚さが見える人は、その芯がかなり強い。逆に言うと軸がしっかりしているからこそ、虚勢を張る必要がないから自然と謙虚になることができる。自分の能力のうち、どれが不足しているかをしっかりと自覚しているからこそ、「まだまだですよ」と自然に言うことができる。
自然な形で表出されるのが「謙虚さ」
「私は~~したことがあります」ということも、ある場面では重要になってくるでしょう。実際に、入学試験や就活で自分の能力をアピールしなければならなかったときに、「私は大したことありませんよ」などと言ってみても、それは謙虚であるということではありません。そういう場面は大なり小なり自分の能力を嘘偽りのない範囲で「飾る」必要があるので純粋な謙虚さは出す必要がないのです。
一方で、真の謙虚さが見えるのはそういう場面ではなく、例えば一対一で話をしているときですね。自分の能力を過度に見せびらかす必要がない時間・空間で、その人がどういう行動に出るか。
普段の何気ない会話で、相手のことをよく見てみましょう。「あの人はいつも怒りっぽくて上から目線だ」とか「自分の能力や業績の話ばかりしている」という人は、おそらく中身は大したものではないのでしょう。もちろんその話し方や態度にもよるのでしょうが、多くの医療関係者や患者さんを拝見してきた身としては、それなりに相関があるものと思います。
よく考えてみてれば、そんなに上から目線でなくとも、能力や業績をひけらかさなくても、自然に話しているうちに勝手にその人のキャラクターというのは他人から決定されていくものです。あなたを決定するのはあなた自身ではない、ということも併せて覚えておきましょう。
だからといって「謙虚なふりをする」ことをお勧めしているのではありません。まず、大前提としてきちんとした能力があるからこそ謙虚でいられるのです。そう考えると、自分の態度が今どういう風になっているかを冷静に考えることで、その時点での自分の能力や業績がどの程度のものなのかを判断することもできますね。
例えば、「今の私はどことなくイライラしていて仕事のことで他人に当たってしまっている」場合は、もしかしたらその仕事について自分に自信がなくなっている時期なのかもしれません。あるいは、なかなか自分がやっている仕事の業績を認められなくて、気持ちが不安定になっているのかもしれません。いずれにせよ、謙虚でいられているかを判断材料にして、自分の今の心の状況を判断することもできるのです。
もしも、自分がいま謙虚でいられないのであれば、その原因を探る。能力不足が原因で他人に対して自分の優位性をアピールしなければならない心情になっているのであれば、能力を上げることを第一優先にすれば良い話です。
相手を観察することで、心の余裕を見抜く
逆に、相手がなぜか威張って自分に対して色々と偉そうな態度をとってくるのであれば、こう考えましょう。「今は謙虚でいられない時期なんだな。もしかしたら、この仕事にあまり自信が持てていないのかもしれない」と。
一つ言えることは、その道をしっかりと究めた人は、他に追随されることはありませんから、気持ちに余裕もできますし、むしろそれを還元しようとさえする余裕もできる。この余裕が「謙虚さ」に繋がってくるわけです。
そう考えると、日ごろから相手がどういう態度をとってくるのかを観察することで、不要なストレスを持たなくても済むかもしれません。いつも、自分の仕事の内容にああだこうだ口を挟んでくる人や、細かいミスを指摘してくる人がいるならば、その人の態度をよく観察してみましょう。もちろん、自分に落ち度があれば修正すればよいだけの話ですが、それを過度に受け止める必要はありません。「ありがとうございます」と丁寧に挨拶して、こちらが謙虚になっておけば、いつの間にか立場は逆転し、あなたの心に余裕ができてくるはずです。
挨拶については、こちらの記事でもその力を説明しております。
謙虚でいるということと、自信がないということははっきりと違います。「芯のある強さ」こそが謙虚であり、これを目指して毎日少しずつできることを増やしていきましょう。