はじめに
嗜好の2大巨頭として今でも現代人の日常に溶け込んでいるのは「お酒」と「たばこ」ではないでしょうか。
嗜好であると同時に、我々医師はこれらの嗜好を患者さんから聞くことにより、生活環境と嗜好のベクトルをはかり知ることができる、そんな重要なツールになっています。例えば、お酒はまったく飲まないけれどもタバコは1日に40本吸う人であれば、とても肺気腫や肺癌にかかりやすいな、と考えたりします。お酒も日本酒で1升も飲む人であれば、肝臓や精神面での疾患を気にしたりすることもあります。
趣味のうちにも入るであろうお酒とタバコ、私は医師という立場からはタバコを積極的に趣味のみとしてお勧めすることはしません。
詳しいことは、以下の記事でも説明してあります。
では、お酒はどうでしょうか。
お酒に関しては、個人差こそありますが、飲むことのできる人では「適量」が決まっており、決して「飲んではいけない」ものではないと考えられています。有名な話では、「一日、日本酒で一合程度のお酒を飲む人は、まったく飲まない人よりも寿命が長い」などというデータもあるくらいですから、「酒は百薬の長」ということも納得がいきます。
もちろん、万人にお酒を薬のように勧めるものではありません。適度な量を楽しむことができる人が、お酒を趣味とすべきなのではないでしょうか。毎日飲むことが趣味でもないですし、高いお酒を飲むことだけが趣味でもない。
お酒は太古の昔から精神と身体の良薬として作用してきた側面があります。私も、お酒とは長い付き合いですが、一度も肝臓を含め身体を壊したことはありません。上手に付き合うことで、他の趣味もはかどりますし、勉強も仕事も円滑にいくものと思います。
「お酒が好き」という方は多いのではないでしょうか。強い弱いは関係なく、お酒を一人で飲んだり、大勢で飲んだりすることが楽しい。そんな方々にはぜひ長くお酒と付き合ってもらいたいなと思っています。
さて、そんなお酒の話の中で、私はお酒の「うつわ」にもこだわりたいと思う人間なので、今回は自分が最も好きな、シンプルながらも精緻なつくりをしているワイングラス "RIEDEL" をご紹介します。
RIEDELとは
オーストリアのワイングラスブランドであるRIEDELは、非常に長い歴史の中で、多種多様な形をもったワイングラスを作ってきたようです。それぞれのお酒に最も適した形のグラスを提供しているところが、私はとても細やかな趣味を感じ取り、大事に使っています。
グラスの形が一つ一つ異なることで、そのお酒の持ち味を最大限に活かすことができる。そのためには、お酒の味とグラスの形を一つ一つ繋ぎ合わせていく作業が必要で、納得いくまでテイスティングが繰り返され、そして一つの作品になったのが、今のワイングラスたちです。
RIEDELになぜ惹かれたのか
一番有名なグラスブランドには「バカラ」があります。とても細かい文様が特徴的なグラスで、豪華絢爛なイメージが強いです。一方で、RIEDELはワイングラスを基本にしてシンプルで神秘的な作品を作り上げているイメージがあります。
シンプルな形のグラスは、たとえ一つであったとしても、様々なお酒の器として働いてくれます。シンプルだからこそ、応用が利くということの典型例なのかもしれません。グラスは薄く、ていねいに扱わないとあっという間に壊れてしまいますから、そういう意味でも、大切に持ちたくなるような逸品です。
上にご紹介したのは私も普段使いする廉価でシンプルなグラスです。
飲み口が薄ければ薄いほど、そのお酒の味や雰囲気をダイレクトに感じることができるので、私はどこのレストランに行ってもグラスにRIEDELが使われていないか、ついつい探してしまいます。
こんな形をしたワイングラスもあります。グラン・クリュというのは「特級畑」の意味合いで、ワイングラスの最高峰を意味しているものと言えるでしょう。
ワインの味覚が最大限に伝わるように設計されているグラスですが、佇まいも立派なものです。いつかは、普段使いで手に入れたい至高のグラスだと思っています。
楽しめるものはワインだけではありません
実は、RIEDELのグラスは形こそワイングラスではありますが、ワイングラスの中にはワインだけが入るものではありません。
私はビールでも、日本酒でも、ワイングラスに入れることがあります。もちろんビールにはジョッキや専用のタンブラーがありますし、日本酒にはお猪口もあります。ですが、ワイングラスの形が「味を最大限に表現する」ものであるとするならば、ビールも日本酒も、様々なお酒はワイングラスの上で綺麗に表現されるのではないかと思っています。
一つのグラスで、多くの種類のお酒を楽しもうと思ったときに、タンブラーでワインは楽しめませんし、お猪口でビールは飲めませんね。ですが、ワインは初めから最後まで、いろいろなお酒を楽しむことができます。そして最後に、ていねいに洗って乾かしておけば、一つの器でお酒という趣味を完結することもできます。
質の高いグラスを一つだけ持ち、色々なお酒を楽しむ。私にとっては至福の時間です。
おわりに
皆さんも、お酒を嗜む人であれば是非一度はRIEDELのグラスで様々なお酒を楽しんでみてください。自宅で飲む習慣がないと、なかなかグラスには手を出すことができないかと思いますが、外食でのレストランでも、たまにRIEDELを見かけることがありますよ。
趣味としてのお酒を、長く続かせるための一つのヒントとして、「グラスにこだわってみる」というのをお勧めします。