運動習慣は意外とつきにくい
運動は、しなければならないと常日頃感じていてもなかなか実行に移せないというのが現実的なところでしょう。
実際、仕事が終わると頭もくたびれていますから、そこから積極的に運動しましょうと言われても、おっくうになってしまうのは非常によくわかります。
ですが一方で、運動習慣をつけておくことは健康増進への第一歩であることは間違いありません。
ダイエットに関する様々な広告やダイエット法は絶えることなく新しい情報が錯綜しています。
しかしその一方で、「痩せる」「太る」という現象に関する根本的な原因は一つしかありません。
消費カロリー>摂取カロリー:痩せる
消費カロリー<摂取カロリー:太る
この不等式は非常に簡単ですが、腑に落とすことが難しいのです。
もっと簡単に痩せることができるのではないか。脂肪燃焼のサプリなどを使えばラクに痩せられるのではないか。そういう風に考えられる方も多くいらっしゃいます。
実際には、消費カロリーを増やそうと思ったら運動するか基礎代謝を上昇させる(安静にしていても勝手に消費されるカロリーのことですね)方法しかありませんし、摂取カロリーを減らそうと思ったら純粋に食事制限をするしかありません。
運動量を増やすことと、食事制限をすること。これらは個人個人の状態に合わせて適切に配分していく必要があります。せっかくなので食事制限のシンプルな考え方をご紹介します。
食事制限はきちんとやれば効果的
食事制限に関しては、言葉のマイナスイメージとは反対に、適切に行うことによって効果的に減量することができます。
過度の食事制限は栄養バランスの乱れを招きますから絶対にやってはいけないのですが、今の自分の体格に合わせた適正カロリーを知ることは非常に重要です。
糖尿病をはじめとした生活習慣病の患者さんは、まずエネルギーとしてのカロリーを厳重にコントロールするとともに、塩分や三大栄養素のバランスに配慮します。
実際、院外で血糖値のコントロールが非常に悪かった患者さんでも、入院してエネルギーをコントロールされると見る見るうちに食事療法だけで血糖値が良くなっていくということもあります。
もちろん、糖尿病の患者さんは特に厳格にコントロールされてしまうので、そこまでやる必要はないのですが、目安としては以下の式が一日必要カロリーとなります。
身長(m)×身長(m)×22×25~30(ハードな運動をする人は35) [kcal]
これを最低限の目安にして、三大栄養素のバランスを考えると、コンビニ生活が多い人でもトータルカロリーを意識しながら食事を摂ることができます
家で食事を摂れないときも職業柄多くありますが、そういうときでもコンビニの裏面表示でカロリーをある程度把握しておくことで、摂取過剰にならずに済んでいます。
実際、20歳くらいの自分の体重から大きく逸脱したことは今までありません。
そのうえで、運動量を無理なく増やすために自分が毎日実践していることをご紹介したいと思います。
毎日の行動を少し変えるだけで運動量は劇的に変わる
もちろん、ジムに通って筋トレしたり、有酸素運動を毎日続ける習慣がある方は、それも非常に良いことです。運動ができる時間を作り出すことそのものが、生活に彩りを持たせることになります。
その一方で、仕事が遅くまであって忙しいという方は帰宅してから本格的に筋トレをしたり有酸素運動をしたりすることは事実上不可能でしょう。
ですから、仕事中にできる運動をしてしまえばよいと思うのです。
すべての移動を階段に置き換えてしまう
最近私が実践してみて効果を実感しているのは、エレベーターやエスカレーターを使わず、階段で移動するということです。
病院内は特に縦方向に建物が伸びていることが多いですから、移動するには多くの関係者の方がエレベーターを使うことになります(10階から1階に降りなくてはいけないということもあり、時間がかかってしまいますからね)。
しかし、それが常態化してくると、朝の出勤時間、夕方の退勤時間になると一斉にエレベーターの前に人が集結します。そうすると待たなければならなくなり、大体においてエレベーターは各駅停車になってしまいます。
そのことに嫌気が差し、ちょっとでも目が醒めるようにと朝の出勤時から階段を使って移動するようにすると、一週間もしないうちにまったく息が上がらなくなりました。
そして、疲れにくさも感じるようになりました。
一般的に、階段を1段昇るだけで、約0.1kcalの消費になります。
1フロア昇るためには、だいたい20段近くは昇らなければなりませんから、2kcalとなります。
仕事中の階段昇降をすべて行うとすると、数えてみると私の場合は大体20回近く5フロア分ほどを移動しますから、昇りだけで考えてみても20段×100で2000段は昇っている計算になります。
実に200kcalの消費になるわけですね。下りはその半分程度と言われていますから、100kcalを加算して300kcalです。このようにカロリー消費もできる上に、大腿の筋肉も鍛えることができます。
通勤を自転車か徒歩にする
これは以前、私がかなり地方の病院に勤務していたときに感じたことですが、土地が広ければ広いほど、皆さんは通勤に車を使うようになります。
車を使うことによって、一日の徒歩による移動時間は激減してしまいます。
朝、車に乗るまで数歩、車から降りて病院まで歩くのに数百歩程度です。
車は非常に楽で速いですが、徒歩のチャンスを失ってしまっています。
車社会と言われている田舎では、比較的肥満や糖尿病を呈している人が多いような印象があります。
もちろん、遠距離を移動しなければならないのを無理に車を使わないということを推奨するわけではありませんが、徒歩で行くことのできる距離(私であれば数kmまでなら歩けます)であれば自分の足もしくは自転車での通勤をお勧めします。
個人的には徒歩通勤が最も清々しい気分になれると感じていますが、朝の時間はそれほど緩やかには待ってくれませんので、自転車通勤でもよいでしょう。車と比較すると、季節の移ろいを十分に感じながら、足を動かして自然な戦闘状態に入ることができます。
徒歩通勤+階段昇降で変わったこと
私の実感としては、朝の仕事の入りがスムーズになり、頭の回転も速くなるように感じます。また、階段を上っている最中にはエレベータのなかで虚空を見つめている状態とは異なり、常に新しい想像が頭の中を駆け巡る状態で、頭の中も階段を上っているような感覚になります。
階段を上っている最中に様々なアイデアが閃いたときには、一度踊り場で立ち止まってメモをするようにしています。
アイデアを生産する習慣は、意外なところに隠れているものだと思いました。
距離が遠く、電車で通勤しなければならないサラリーマンの方も多数いらっしゃることと思います。
そういうときには、駅まで徒歩で行く(このときに、1駅余分に歩いてみると、さらに効果的です)+電車内では立っている+ホームの移動は階段昇降ということを繰り返すと、こちらも朝のリズムが形成されて仕事の入りがスムーズになるのではないでしょうか。
通勤時間帯に、大勢がエスカレーターに群がる姿をよく見かけますが、エスカレーターの方が早いと思いきや、空いている階段を小気味よく上っていく方が圧倒的に早かったりします。
大きな変化は日常の行動の方向を少し修正するだけで達成できる
運動習慣は、「よし、やるぞ」と意気込んで色々やろうとすると三日坊主で終わってしまうリスクの高い習慣です。
それは、日常生活とやろうとしている運動習慣があまりにもかけ離れているからです。
筋トレをしようとジムに行ったり、水泳に行こうとしたり……これらは習慣としては正しいことですが、その環境に到達するまでの壁が高すぎるため、一度挫折してしまうとやらなくなってしまうことの方が多い印象があります。
毎日、私たちは歩いているわけですから、それを少しだけ通勤に利用し、さらにはエスカレーター・エレベーター→階段というマイナーチェンジをするだけで立派な運動習慣の確立になるわけです。
実際に、300kcalをジョギングでやろうとすれば30分は持続的に走らなければなりません。水泳で消費しようと思えば平泳ぎを40分は続けないと難しいでしょう。
普段の仕事に加えて、これらの運動時間+そこに行くまでの時間を確保するのは大変なことだと思います。であれば、仕事中にまとめて運動してしまえば、その後の時間も確保できますし、仕事中の運動によって高められた体力によって退勤後も色々なことをするモチベーションが手に入ります。
車は購入した時点から資産価値が減少し、維持費用も馬鹿になりません。その一方で、自分の足は初期費用0(当たり前ですが)で、使えば使うほど資産価値は上昇していきます。自転車も初期費用はそれほど掛かりませんが維持費もかからず場所も取りませんから、健康に対する利益を考えるとお勧めです。
思い立ったが吉日です。記事を読み終わったら、是非その足が向かっている方向をエスカレーターから階段に変えてみてください。