負けず嫌いは集団のトップに立つチャンスがある
私は昔から負けることが嫌いな人間でした。
皆さんの中にも、仕事で同期に抜かれるのが悔しかったり、テストで悪い点をとってしまったときにもやもやしたり、そういう瞬間を経験されたことがあるかもしれません。
いわゆる「負けず嫌い」ですね。あまりいいイメージでとらえられることのない「負けず嫌い」ですが、私はこの根性をお勧めします。
負けたくないという気持ちがあるから勉強できるし努力できる。
禅の考え方は、「他者と比較しない」ということを説いています。私はその考え方に感銘を受けたのですが、そうすると「他者と比較する」ことと「他者と比較しない」ことと、どちらがいいのでしょうか?
答えは「そのときどきに応じる」ということです。
他者と比較するべきとき
これは何か上を目指そうと頑張っているときにほかなりません。
勉強でも、仕事でも、投資でも。これは周囲の状況から自分のいる位置を的確に見抜いて「もうちょっと頑張らなければ」と奮起するために必要な要素です。
当然、テストで出来のいい子が高得点を取っていれば「悔しいな」と思って勉強すればいいし、営業でよい成績を上げている人がいれば「なにくそ」と働いてみるのもよし。
頑張るための起爆剤として「他者と比較する」のは有効な手段です。
他者と比較してはならないとき
とはいっても、一日中他者と比較していると、いつしか頑張っていたエネルギーがなくなり、自分の価値がどんどん薄くなっていってしまいます。では、どのようなときに他者と比較してはならないのか。それは他でもない「自分の考え方」です。
自分が考えた結果として行動していること、それを他者と比較してはなりません。
自分が考えて「これでいい」と思った勉強方法であったり、生活習慣であったり、そういったものがちょっとうまくいかず他人がうまくいっているようにみえるから、隣の芝生が青く見えてしまう。
これを続けてしまうといつまでたっても自分の個が確立できず、軸がぶれてしまいます(付和雷同についてもお話ししています)。
自分は自分、他人は他人という意識を確実に持ったうえで、「点数」とか「成績」という部分を比較することで、自分のオリジナリティをさらに格上げしていくことができます。
「彼はああいう風にやっているが、自分はこのやり方を究めて成績を上げる」
この意識がとても重要です。そのために、人とは異なる領域を勉強してみたり、ほかの人ができないくらいたくさんの勉強をしてみたり、質と量ともに変化をつけていく。そうすることで徐々に自分のやり方で成果が上がってくるようになります。
他人の真似をすることで得た成績は、果たして本当の成績でしょうか。
参考書やビジネス書の真似をしただけでは面白くありません。そこに自分なりの意見をプラスアルファすることによって、より自分らしさがでてくる。
この2つの選択肢を踏まえて、以下のことをお伝えしたい。
狙うなら「一番」を目指しましょう
これが皆さんに伝えたい大事なことです。
やるならトップを狙うくらい努力しましょう。
これも、ある意味他者と比較することがなければ「一番」という概念がないわけなので、努力するための比較ということになるわけですね。
ですが、なんでもかんでも一番を目指して頑張るということも、いたずらに気力・体力を使ってしまうだけです。そこで、もう一つ深く掘り下げてみましょう。
「鶏口牛後」という言葉をご存知でしょうか。
大きな集団の中で尻にいて使われるよりも、小さな集団であっても長となるほうがよいということ。
「鶏口」とは、鶏の口の意味から、小さな団体の長のたとえ。
「牛後」とは、牛の尻の意味から、大きな団体に使われる者のたとえ。
とてもシンプルな表現ではありますが、大きな集団よりも小さな集団の中でトップを目指すことを説いています。
皆さんの中では、巨大な会社の中で毎日あくせくと働き成果を上げている方もいらっしゃるでしょうが、逆に振るわず悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
大きな集団の中でトップを目指すことは並大抵のことではありません。
人数が増えれば増えるほど、その難しさはただの足し算ではなく掛け算の要領で上昇していくものです。
成果を上げようとして努力しても、他者から足を引っ張られたり、さらに仕事を任されたり……。トップに上り詰める最中に目標を見失ってしまうことも、少なくありません。
そんなときに思い出していただきたいのが「鶏口牛後」です。
まず、小さいところで構わないから「一番」をとるように努力してみる。
そうすると、2ついいことがあります。
(1) トップを目指す過程が大集団と比較して鮮明になるので、モチベーションの維持がしやすい
大集団でトップに上り詰めようとすると、途方もない時間がかかることがあります。
例えば医学部の事情ですと、有名大学医学部へ合格することが良い例ですので、そちらを考えてみましょう。
凄まじい勉強量で、僅か一点の差を求めて日夜勉強に明け暮れる。
高校時代のほとんどを勉強に費やした、という方もいるでしょう。
しかも、だからといって確実に合格できるわけでもなく、同じように勉強している集団ですから、ほんのちょっと運気が傾いただけで不合格になるということもあるでしょう。
「絶対にやってやる」という気持ちを持っている方であれば、素晴らしい心意気と応援します。ですが、「うーん、一応ブランドも名が通っているし、入っておいた方がいいのかな」という程度であるなら、あまりその集団の中に入ることをお勧めしません。
大きな集団に入る場合には、より正確に自分の立ち位置を見極めて、覚悟のうえで参入する必要があるわけです。いきなり、自身もなく入ってしまえば、あえなく打ちのめされてしまう可能性だってあるわけです。
一方で、例えば小さな塾で一番をとってみる。あるいは、超有名大学ではないが自分なら「一番を狙えそうだな」と思えるところで頑張ってみる。そうすると、自分の手の届く範囲で努力が追いつきそうという感覚が湧き、大集団にいるよりも「もうちょっとでできそうだ」という気持ちになれますよね。
このようにして、小さい集団の中で確実に成功体験を積み重ねて、自信をつけていく。そうすることにより、次に挙げる項目へ進むことができます。
(2) トップをとったときにさらに上のステップへチャレンジする気持ちが湧いてくる
人間の心理は不思議なもので、ある領域で一番をとると、そこで居座るよりも「もっと先へ行きたい」という気持ちが湧いてくるものです。実際に、問題集を解いてみても100点ばかりとれていれば簡単でつまらないでしょうし、会社の中でも簡単な仕事が確実にこなせるようになってくると、ほかの仕事にチャレンジしてみたくもなってくるでしょう。
その気持ちが湧いてくることが次のステップへの転換点となります。
もともとベースとなる力がその集団の中で形成されますから、少し上のレベルを目指そうとしたときにも、まったくの「ゼロ」から始めるときと比べて自信の大きさが違ってきます。
いきなり応用問題を解くのではなく、基本問題が確実にこなせて「わかってきたぞ」という感覚になってから挑む。あるいは、入社1年目より2年目の方が圧倒的に色々な仕事のことをわかっていますから「あのころよりもできるようになっている」という気持ちになるのでさらに上のレベルの仕事ができるようになる。
これもみな、「小さいところから始めるから」できることなのです。
逆を返すと、上を目指そうと思ったらまず小さい集団で勝てる場所を見つけなければなりません。やみくもにトップを目指そうと大集団の中に身を埋めてはいけません。そこを見極める力をつけることが重要です。
集団のトップに立つ
この「鶏口牛後」という言葉は、ともすると「逃げ」と捉えられてしまう言葉かもしれません。ですが私はこの方針で十分医学部にも合格できましたし、何不自由なく仕事をすることができています。
決してトップの中のトップに立たなければいけないというわけではありません。誰が決めたわけでもありませんし、そんなことでストレスを溜めるのであれば自分が居心地の良いと思う場所をまずしっかりと見つけて、そのなかで確実に成長していけばいい話です。
小さい集団の中で傷を舐め合ってはいけません。「成長する」という強い意志を持って、その集団の中でトップに立とうと努力することです。
皆さんのいる集団は、皆さんにとって成長を促してくれる大きさでしょうか?
大集団の中で自分を見失いそうになったときには、この言葉を思い出しましょう。
必ず、あなたにもトップを目指せる場所が存在します。